笑顔のチカラ~笑う門には福来る~
新学期に入って2ヶ月が経った。
「お兄ちゃーん!朝だよ、起きて!」
バサッ。
いつものように、朝がきた。
妹に布団を剥がされて起こされる。
何一つ変わらない日常が、この日を境に崩れ始めていた。
「あれ?お兄ちゃん顔色悪くない?」
オレの顔を見て、妹…笑美が言った。
「うーん、ちょっとキツいかも…」
頭が痛い。
吐き気がする。
体がダルい。
昨日までは普通に元気だったんだけどな。
「学校、休んだ方がいいんじゃない?」
「…いや、大丈夫大丈夫!」
試合が近いんだ。
朝練に参加しなかったら今度のメンバー入りができなくなる。
「そっかぁ…
じゃあ、朝ごはんできてるから、準備が終わったら降りてきてね」
「りょーかい!」
オレたちは昨年から2人暮らしなんだ。
一昨年、両親が離婚してオレたちは母さんに引き取られた。
でも昨年の冬、母さんは天国へ。
だから、本来なら兄であるオレが母さんの代わりをしないといけない。
でも、料理できないし、洗濯機の使い方すら分からないから、家事は全て笑美に任せているんだ。
「ごちそうさま。じゃあオレ、行くよ」
あまり食欲なかったけど、朝練があるから無理矢理食べた。
朝食を終えて、まだ食べている笑美に声をかけた。
「うん、無理しないでね?」
心配そうに声をかける妹を安心させるように、オレは笑顔を向ける。
「行ってくるな」
「うん、いってらっしゃい!」
気持ち悪いのを紛らわすように、無心で自転車をこいで学校へ向かった。