笑顔のチカラ~笑う門には福来る~


治ってない・・・


あんなに苦しい治療したのに!?


ふざけんなよ。


なんのために治療したんだよ。


治らなかったら意味ないじゃん!


何なんだよ・・・


ホントにさ、バカみたいじゃん。


治ると信じて今まで2週間我慢したのに・・・


みんなに、修学旅行までには帰ってくるって言ったのに・・・


約束、守れないよ・・・


「お兄ちゃん・・・?」


笑美、お前にも辛い思いさせたな。


夜中もずっとオレに付き添ってくれて、苦しいときには背中をさすってくれたな。


本当に、ありがたかった。


だからもう、迷惑はかけられないよ・・・


「お兄ちゃん、まさか、諦めてないよね?」


「えっ・・・?」


「もう、治療しないとか思ってないよね?」


何でわかるんだ・・・?


オレの気持ち・・・


「諦めてるの?」


「だって、もうお前に迷惑はかけられないよ」


「・・・・・・!」


笑美の目が大きく見開かれた。


でも、先生も言ってただろ?


この次の治療は、誰かの手を借りないと色んなことができなくなるって。


それ、笑美の手を借りないといけないってことじゃん。


もう、ダメだよ。


これ以上、お前に負担をかけたくないよ。


「お兄ちゃん、私が迷惑だなんて思ってると思う?」


「思わないよ。お前は優しいから、オレが治療したいって言ったら、わかったって協力してくれるよな」


「そうだよ。私は、お兄ちゃんを応援する。
だから、お兄ちゃんが決めたことには反対しない」


「だからオレは・・・」


「でも、今回は違う!」


だからオレは嫌なんだ。

そう言おうとしたオレの言葉を遮って、はっきりと笑美は言った。


「私が犠牲になるのは別にいいの。
私の頭の中は、お兄ちゃんのことでいっぱいなんだから。
だけど、お兄ちゃんが自分を犠牲にする必要はない!
言ったよね。無理に自分の感情を抑え込まないでって。
本当は、修学旅行行きたいんでしょ?
いち早く元気になって、サッカーしたいんでしょ!?

お兄ちゃん・・・自分にウソをつかないで。
私に迷惑かけるとか思うんだったら、治療しないんじゃなくて、治療して、早く元気になってよ!」


気がつけば、オレの目から熱いものが込み上げてきていた。


「お兄ちゃん、お願い・・・諦めないで・・・」


笑美も、泣いていた。


「ごめん・・・笑美、オレ、治療する。
早く元気になるよ・・・だから、泣かないで」


「お兄ちゃんだって泣いてるじゃん!
よかった・・・お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・!」


ごめんな。


いつも、泣かせてばかりで。


でも・・・








ありがとう。
< 52 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop