振り返れば、こおりみち(アスペルガー症候群)
田舎町で生まれ育ったリンには、歳の離れた姉が二人いた。
長女のサヤ、次女のユカ、そして末っ子のリン。
サヤとは8歳、ユカとは7歳違いのリンは、子供のころはいつも姉にあちこちついて回っていた。
リンが小学校低学年の頃には人形やブロックで一人遊びをひたすらやっていた。
寂しさはなかった。
小学校高学年になる頃には姉二人は大学生になり、家を出て行ってしまった。
寂しさはなかった。
リンは姉を本来の姉のような存在に感じることが出来なかった。
まるで近所のお姉さんのように他人のようで、一線を引いて接するようになっていた。
三姉妹でありながら、一人っ子のように育ったのだ。
姉妹なのにまるで興味がない。
母は怖い人と感じ、父は外へ連れ出してくれる人と感じ、祖母はよく面倒を見てくれる人だった。
この頃には家族という感覚がわからなかった。
例えば、他人の家にいるのと変わらないような、毎日同じ家に帰ってくる人たちというような感覚で、家族と感じることがうまくできなかった。
怪我をしても黙っていたり、風邪をひいたり痛みがあったりしても親に話したいと思えなかった。
そのうち報告するように決められて、自分の体調に異変があると逐一話すようにはなったけれど、それもまるで業務的だった。