ねぇ、聞いて
愛子と別れ教室に入り自分の机を探すと真ん中の列の一番後ろに「立花茉莉」と書いてある自分の机があった。

真ん中は嫌だけど後ろの席でよかった…。

自分の席に座って周りを見たら皆、友達を作ろうと席を立っておしゃべりをしていた。

「中学校どこー?」
「えー!私も私も!」
「その人知ってる!こっちの中学でも有名だったよ!」

共通点を探そうと必死に質問をしている女子。
あの子が可愛い、この子が可愛い、と騒いでいる男子。
座っているのは私だけ。
でもこれでいい。
だって私の友達は愛子だけだから。
他の人なんて…信用できない…。

ーー私の頭であの時の事が蘇る。

「まりちゃんのパパいなくなっちゃったんだよ」
「いっぱい借金があったんだって」
「借金ってなにー?」
「馬鹿な人がする事。ってママが言ってたよ」
「まりちゃんは馬鹿な人の子供だから関わっちゃいけませんって」
「まりちゃんに関わったら借金病が移っちゃうぞー!」
「キャハハハッ」

ガラッ
「皆、座れー」
ドアが開いた音と同時に教師の声が聞こえてハッと現実に戻る。

「……はぁ」
汗ばんだ手をぎゅっと握りしめる。
まだあの時の笑い声が耳に残ってる……。
心臓がドクドクと音を立てて痛む。
もう、思い出さないようにしなきゃ…。

落ち着きを取り戻して前を向くと、男の先生が教卓に立って話をしていた。
さっきまで騒がしく話をしていた女子や男子も自分の席に座っていた。

「えー、今日から君たちの担任になる泉直也(いずみなおや)です。皆、一年間よろしく」

しばらく先生が話をした後で私達は体育館に行き入学式を済ませてそのまま下校になった。
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