初恋フォルティッシモ

ガッシャーン!!



そうやって派手に割った瞬間、俺は即座に近くの男子トイレに身を隠す。

幸いそこには誰もいなかったけれど……麻妃先輩は無事に告白されていないだろうか。

俺は学校の窓ガラスを割ることなんて中学の時なんかしょっちゅうだったし、だからもう今更躊躇もない。

男子トイレのドアの微かの隙間からさっきの窓の方に目を遣ると、そこにはすぐに麻妃先輩と青田がやって来た。



「え、いまの何の音!?窓ガラス!?」

「っ…誰かが割ったんすよきっと!」

「何で!ってか、誰もいないしー…」



……俺なんだけどね。


だけど、今ので青田の告白がどうやら強制的に中断されたらしく、俺は独りほっと胸を撫で下ろす。

…良かった。


しかし、そう安心したのも束の間。

窓ガラスが割れた派手な音を聞き付けて、その瞬間先生達が数人そこにやって来た。



「何だ今の音は!」

「窓っ…誰が割った!?お前らか!!」



そして黙って見ていると、たまたま一番にかけつけていた青田と麻妃先輩が、そうやって先生に疑われてしまう。

…あっ。

でももちろんそれは違うし、青田はともかく女子である麻妃先輩が消火器で窓ガラスを割れるわけがない。

だから二人は必死で否定していたけれど、犯人の俺がすぐに隠れてしまったために、場の雰囲気は更にその二人が犯人なんじゃないかとそこにいる先生達皆から疑われた。
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