初恋フォルティッシモ
「っ、違います!あたし達じゃないです!割ってません!」
「じゃあ誰が割った!ここにはお前らの他に誰がいたんだ言ってみろ!」
「…それは、」
…あたし達の他には誰もいません。
麻妃先輩がそう言うと、先生達は「正直に、自分が割ったと言えないのか」と二人を厳しい目付きで睨む。
って、完全に疑われてるし。
俺は出るつもりはなかったけれど、まさか麻妃先輩が窓ガラスを割ったと疑われるとは思わなくて、
これ以上はこのやりとりを見ていられずに、俺は勇気をだして間に割って入った。
…さすがに、麻妃先輩が可哀想だ。
「待って下さい!」
「!」
「コイツら関係ありません。…俺がやりました」
俺が先生達の前に立ってそう言うと、先生達はビックリしたように目を見開く。
さっきまで俺が隠れていた男子トイレは、大きな柱に隠れており、しかも先生達は俺の方に背中を向けて立っていた。
だけど俺が走ってそこに立つと、背後からもビックリしたらしい麻妃先輩の声がした。
「…三島くん…なんで、」
なんで、も何もない。
だって本当に、正真正銘俺が割ったんだから。
だけど、俺が隠れるのが早すぎたせいで、先生はそんな俺の言葉を疑うように目を細める。
「…なんだ、三島?」
「…」
「何を言ってるんだ。お前は近くにいなかったじゃないか」