初恋フォルティッシモ

いいからお前は引っ込んでろ。


そして俺の言葉なんて聞く耳持たん、といった様子でばっさりそう言うと、先生はまた麻妃先輩や青田に目を戻す。

でも、逃がさない。



「本当っすよ!マジで俺が割ったし」

「だったら証拠は、」

「………消火器で、ガシャンと。っつか、女子はそんなこと出来ないっしょ」



俺がそう言うと、先生は俺から視線を外して半ば困ったような顔をする。

きっと先生は、俺が二人を庇っていると思っているんだろう。

でも、俺が割ったのは本当だから。

なんとかして麻妃先輩の前に立って先生にそう白状すると、先生はやがて俺の気迫に負けたのか、すぐに生徒指導室に来るように厳しく促した。



「…三島くんっ…」

「…」



その後先生のあとに続いて階段を上ると、その途中で背後からそんな心配そうな麻妃先輩の声が聞こえてきた。

たぶん、先輩も俺のことを疑っているんだろう。割ってないでしょって。

俺はその声に静かに麻妃先輩の方を振り向くけど、何も言わずにやがてまた前に顔を戻して二人から離れた。


…少しは、青田の邪魔ができたかな。

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