初恋フォルティッシモ

「…え、」



俺がそう言って麻妃先輩を見遣ると、その時眉をハの字に曲げた麻妃先輩と目が合う。

さっきもそう言ったじゃないっすか。

そう言って靴を履き替えると、その間に6限目の授業が終わりを告げるチャイムが鳴った。



「…でも、」

「…」



すると、俺のそんな言葉に、また麻妃先輩が口を開いて言う。



「三島くんが、窓を割る理由なんて、ないじゃん…きっと」

「!」

「本当に割ったんなら、何でそんなことしたの」



そう言って、相変わらず細い目で、俺を見つめる。

けど…その答えは、もちろん言えない。

青田の告白を邪魔する為だ、なんて、そんなことは…。


だから俺は、笑って誤魔化すように言った。



「べ、別に、理由とかいらないでしょ」

「…」

「窓を割るのに、理由とか…いや、ないない」

「…」

「…あ。あと、俺今日から二週間停学になったんで。それと、来月の定期演奏会も出られないみたいっす」

「!…え、」

「麻妃先輩、青田と二人でサックス頑張って下さい、」



俺はそう言うと、「じゃ」と麻妃先輩に背を向ける。

引き留めたりはしないだろ、とそのまま外に出ようとしたら、その瞬間後ろから麻妃先輩の声に呼び止められた。



「…っ、待って!」

「!」

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