初恋フォルティッシモ
その声に、俺は歩く足をピタリと止める。
…まだ何かあんの、
そう思って振り向いたら、麻妃先輩が言った。
「…ほんと?」
「?」
「ほんとに、演奏会出られないの?あんなに練習したのに?」
麻妃先輩はそう言うと、不満そうに俺を見つめる。
…確かに、嫌んなるほど練習した。
けど今は、青田の告白を邪魔できたからこれが正解だとも思う。
……正直、俺がいない間の二週間が不安だけど。
俺はそう思いながら、
「……まぁ、遠くから応援くらいはしてますよ」
そう言って、また笑って誤魔化したら…その突如、麻妃先輩が俺の目の前までやって来て、言った。
「…三島くん」
「?」
「あのね、一つ言っとくけど、あたしが見てるのは不器用なサックスなんだよ」
「…??」
「………二人じゃ意味ないじゃん」
そう言うと、麻妃先輩は上げていた顔を俯かせる。
そんな麻妃先輩の言葉に、俺は首を傾げつつも…その不満をかき消すようにその体をこの腕で包みたかった。
だけど、そんな勇気はもちろん無くて、いつまでも情けない腕が躊躇う。
…なんで、窓は派手に割れてコレは出来ねぇの。