初恋フォルティッシモ

しかし黙って離したあと、ユリナが落ち込んだように顔をうつ向かせて言う。



「…勇佑、ユリナに指輪買うの嫌なんだ」

「!?」

「だからそうやって言うんだ、」



嘘、バレてる!


そして「はぁ…」と深くため息を吐くユリナに、俺は慌てて否定するように言った。



「や、違うってマジ!何言ってんだよ!」

「…」


「指輪は関係ないし!ただ、今日は日中雨だからってだけで!ほんとそれだけ!

っ…ほら、このとーり!さっきユリナのために金下ろしてきたんだぜ、バイト代!ユリナのためのバイト代!」



俺はそう言うと、服のポケットから財布を取り出して、さっき下ろしてきたばかりのそれをユリナに見せる。

そして、また言葉を続けた。



「カワイイ彼女が指輪欲しがってんのに、プレゼントしたくないわけがないだろっ」

「!」



俺はそこまで言って、「な?」とユリナの顔を覗き込もうとする。

…ここで怒らせると、ユリナの場合後始末が余計に面倒だからな。

だけどユリナと目が合った途端、ユリナはまるで怒っていることが嘘だったかのように、ぱっと顔を上げて嬉しそうに言った。



「ほんと!?」

「!」

「じゃあ勇佑、ユリナに指輪プレゼントしたくてたまらないんだ!?」

「え?あ、」



…したくてたまらない、ってわけじゃないけど。

でも、ここは頷いておかないと…。



「…そう、だな。いやもちろん!プレゼントしたいよ!」
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