初恋フォルティッシモ
気を取り直して俺がそう聞くと、それまで嬉しそうに指輪を見つめていたユリナが、それから視線を離して「うーん…」と考えだす。
いつも出掛けのデートは、ユリナが行きたい場所を優先している。
だから俺が計画を立てることはほとんどないし、ユリナのその時の気分でころころ変わるから行き当たりばったりだ。
そして俺の問いかけに少し考えていたユリナは、ふいに見えてきたデパート内の喫茶店を指さして、言った。
「んー…あ、あそこに行きたい!」
「腹減ってんの?」
「スイーツが食べたい気分なのっ」
…なるほどね。
ユリナに言われるままに早速そこに行ってみると、ちょうどそこは今日だけカップル割引をしてくれているみたいだった。
…助かった。
わざわざ口には出さないけれど、財布に優しい。
「勇佑、ケーキ食べたい」
「いいよ」
「勇佑なに食べる?」
「……俺コーヒーでいい」
「え、それだけ?つまんなーい」
…つまんないって何だよ。
俺は本当はケーキ等の甘いものは苦手だけれど、ユリナがそんな俺を見かねてチーズケーキを2つオーダーした。
…まぁ、別にいいか。
朝飯食ってないし。
「勇佑はさ、新しい仕事いつからなの?」
そして、オーダーした後の待っている間。
ふいに向かいに座るユリナが、そんなことを聞いてきた。
…あ、そういえばユリナにはまだ言ってなかったっけ。
俺はその問いかけに、テーブルに肘をついて答える。
「来月から。1日からすぐ」
「えっ。じゃあ再来週じゃんっ」
「…そだね」