初恋フォルティッシモ

あれ…あの人…。


俺は後藤の話を耳に入れつつ、見つけたその“人物”へとなんとなく近づいていく。

心臓をドキドキさせながら、相手を確認するようにじっと見つめる。


そんな俺の存在に、相手は気づかない。



「…、」



近づけば近づくほど、その必要はないのに息をすることすら慎重になる。


相手のその人は、女の人。

黒髪ロングで、服装は会社のスーツ。

ホテルの前で、スマホとにらめっこをしていて、誰かを待ってる?ようにも見える。


俺はとにかく、ちゃんとその人の顔を確認したかった。

もしかして…って、そんな期待があったから。



『でさ、そっからすげー喧嘩になって、もう逢ってない』

「…」

『ま、言ってみりゃ自然消滅だよな。マジあんな奴だと思わなかった。お前も気をつけろよ、三島』

「…」

『…三島?』

「…」



そして、もう本気で後藤の話が入ってきていない俺は、その時やっと相手がその人だと確信できた。



「!!」



…間違いない。


あの背丈。顔。

何より細い、目。


あの人…




麻妃先輩だ!
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