初恋フォルティッシモ
ふいに、
突如俺の耳に聞き覚えのある“音”が聞こえてきた。
それは、昔もよく聴いていて、俺が唯一“憧れ”だった楽器の音。
…トランペットだ。
その音を聴いて、俺がわからないわけがない。
本当に俺が幼い頃から俺には両親がいなかったから、俺はずっと普通の家庭と同じようにはさせてもらえなかった。
だけど、まだ小学校に通っていたある日、俺は引き取ってもらっていた祖父に初めて映画に連れてってもらったことがあった。
その映画は、オーケストラが舞台の映画で。
洋画だったしその頃は映画の内容がよくわからなかったけれど、その映画の中で主人公が吹いていた“トランペット”がとにかくカッコ良かった印象があって。
そこから俺は、トランペットだけは特別な思いを抱いていた。
…どこから聞こえてきてんだ?この音。
………あっちの方かな。
俺はそう思うと、いてもたってもいられなくて、思わず自分の耳だけを頼りにその音を辿ってみる。
どうやら音の発信源は三階の音楽室にあるらしく、廊下からコッソリ中を覗くと…
「…!」
そこには…
トランペットを吹く、男の先輩がいた。
聞いたことがないメロディーだけど…しっかりした音と…揺るがない真っ直ぐな音。
…すげぇ。
俺は思わず…その光景を、見入ってしまう。