初恋フォルティッシモ

その声に、ふと麻妃先輩を見遣る。

でも、目が合った瞬間「…げ」と体が自然に嫌な風に反応した。

だって、俺が今麻妃先輩に声をかけられる理由って…



「三島くんも、お風呂終わったら練習しようね。二階の多目的室借りたから、サックス持ってそこに来てよ」

「……あい」



…そう。“夜の練習”しかないから。

っつか、やっぱりな。そうだと思ったよマジで!

真面目な麻妃先輩が、この合宿っていうチャンスを利用しないわけがないんだし。


なるべくなら頷きたくなかったけど、俺は麻妃先輩の言葉に仕方なく頷いた。

…ま、まぁ、麻妃先輩がいるんだし。

練習っつっても、そんな長くはやらないだろ。


そう思いながら、俺はその時やっとカレーを完食する。

俺から離れて自分の席へと戻る麻妃先輩を眺めながら、俺は向かい側に座る松下に言った。



「…なぁ」

「はい?」

「わり、俺今日女子の部屋行けないかもしんない」

「えぇーっ」



そんなんアリっすか!?


松下は俺の言葉に、まるで“ガーン”と効果音がつきそうなくらいの反応をすると、そう言って大きなため息を吐く。

だけど、「明日は行けますよね!」って真剣に言うから、「お前どんだけ女子の部屋行きたいんだよ」って思わず笑ってつっこんだ。


…いいよなぁ。パーカッションは夜の練習が無くて。
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