初恋フォルティッシモ

…………


夕飯を済ませたあとは、練習の前に風呂に入りに行った。

そういえば麻妃先輩、風呂の後に練習って言っていたけど……本当に風呂の前じゃなくていいのか?

トランペット担当の人達が練習をしに外に出ていく姿を横目にしながら俺はそう思うと、「まぁ人それぞれか」なんて広い風呂があるそこに入る。

風呂は、入れる時間が決まっている。

だけどこの数時間の間はいつでも入れるし、トランペットの人達はそんなに長くは練習しないだろう。


……って、ちょっと待て。

それってつまり、もう既に風呂に入った俺達は逆にずっと練習できるってことだよな?

…カンベンしてくれ。


俺はそう思うと、たまたま隣にいる青田に言った。



「……俺らサックスで運悪かったな」

「え、何で?」



いや、これはマジで本当に。


俺の言葉に青田は首を傾げていたけど、俺はそれ以上何も言わずに風呂に入った。


…まさかこのあと、自分が一番最悪なことを麻妃先輩にしてしまうなんて、予想もせずに…。
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