初恋フォルティッシモ
…………
風呂に入った後はドライヤーで髪を乾かして、またサックスをケースから取り出した。
麻妃先輩が言っていた多目的室は俺達男子部屋と同じ階にあるけれど、施設の案内図ではわりと遠くに離れているらしい。
廊下からふと窓の外を見てみれば、下ではトランペットだけじゃなくてそれぞれに個人練習やフルートの人達も練習をしていた。
…俺も練習するなら外がいいな。
室内だと暑そうだし。
っつか、多目的室どこだよ。
俺はそう思いながら、麻妃先輩が待つ多目的室を探す。
どーせなら青田と一緒に来た方がよかったな。
だけど部屋には青田はいなかったし、たぶんもう先に多目的室に行っているんだろう。
…早く行かなきゃな。
そんなことを思いながら多目的室を探していると、やがてやっとそこに到着した。
やっぱり。多目的室はもう既に明かりがついている。
「…遅くなりましたー」
本当はそんなことは思ってないけど、一応。
その声とともにドアを開けると、だいたい学校の教室くらいの広さがあるそこで、案の定麻妃先輩が先に来て待っていた。
「あ、三島くん。遅いから忘れてるのかと思ったよ」
そして麻妃先輩は俺を見るなりそう言うと、俺を待っている間に見ていたらしい携帯を閉じる。
でも、一方の俺はそんな麻妃先輩とこの感じに違和感。
…あれ?っつか、練習なのに楽器持ってるの俺だけ?
っつか青田は?青田がいない。