初恋フォルティッシモ
「…っ…」
そこまで思い返すと、俺はそれ以上思い出したくなくて、現実に戻った。
…何度あの時のことを思い返しても、いつもここから先は思い出すのが嫌になるんだ。
もしも叶うなら、俺はあの時の自分を自分で殴りたい。
俺は最低だよな。自分でも、悪魔にしか思えない。
…麻妃先輩が、吹奏楽部の同窓会に顔を出さないのも、当たり前…か。
『いや、アカンやん自分!』
『アカンことないやろ、お前が何言うてんねん!』
そしてその時、なんとなくつけっぱなしだったテレビ画面にふいに目を遣ると、そこにはお笑い芸人がふざけていて、観客が楽しそうに笑っていた。
俺はそんな光景に軽くため息を吐くと、リモコンを手に取ってテレビを消す。
「…ふー」
確かにあの時、俺は麻妃先輩に手を出した。
だけど、最後まではしていない。
ただ、俺が本当に思い出したくないのは…手を出した、そのあと。
あの時に見た先輩の涙が、今の俺をも苦しめる。
風呂が沸いてそこに足を運ばせると、せっかく沸いたのに服を脱ぐことでさえ躊躇った。
“…も、きらい”
“え、”
“あたし、三島くんキライ…っ”
「……っ、」
あの時の麻妃先輩の声と姿が、ふいに脳裏に鮮明に映し出される。
その度に、胸が締め付けられるように苦しくなるんだ。
あの日の夜、確かに麻妃先輩は俺に告白をするためにあの多目的室に呼んでいた。
今思い返しても、それ以外に理由がない。…と思う。
それなのに俺は…