初恋フォルティッシモ
風呂から上がると、俺はいつもの如くビールを一気飲みした。
冷蔵庫で冷やしていたそれはキンキンに冷えていて、それまで熱かった体を冷やしてくれる。
二本目のビールを冷蔵庫から取り出すと、俺はようやく昼間ユリナがプレゼントしてくれたネクタイに手を伸ばした。
…そういえば、ずっと気になってたけど、見てなかったな。
ついでにまだ返していなかったユリナのラインに返信をすると、俺は早速ネクタイが入っているその袋を開けてみる。
浮気防止とかで、変なガラじゃありませんように!
…なんて、心の中でそんなことを願いながら。
だけど。
全部で三本入っているその中から出てきたのは、一本はまともな柄のネクタイだったけど、もう二本は会社にしていくにはとても勇気がいるものだった。
紺色をベースに、相撲の絵があちこちにちりばめられている柄のものと、
なんとも可愛らしいキャラクターが描かれているデザインのネクタイ。
…これはないだろー。
俺が思わず口をあんぐりさせながらその二本を見ていると、そのうちにまたユリナから返信がきた。
“ねぇ、ネクタイ見た!?どうだった!?”
そのラインに、俺は“会社にして行けないよ”と返事を打つ。
だけど、せっかく可愛い彼女がプレゼントしてくれたんだ。
会社にして行けなくても………部屋に飾っておこう。
…うん。それに、もういつまでも一人の女に悩んでいるのはやめた。
俺はこれからユリナだけを愛していく。
麻妃先輩のことは…もう終わったことだ。いつまでもクヨクヨ悩んでたって、もう無意味。
俺はそう思うと、早速寝室にその二本のネクタイを飾ってみた。
だけど、そんな決心も、神様はまだ許してくれない。
その数週間後に待つ運命へのカウントダウンが、この時はもう既に始まっていた───…。