初恋フォルティッシモ
……………
いらっしゃいませー、と店員に声をかけられながら中に入ると、カウンターには他の客が数人くらい並んでいた。
そこにいたのは、通勤途中に寄ったらしいOLや、サラリーマン。
このカフェはカウンターで品を注文して会計を済ませてから、テーブルでそれを受けとるらしい。
朝食はいつもはほとんど食わないけど、今日は特別。
やたら時間を気にしているサラリーマンの後ろに並ぶと、俺は上に大きく書かれてあるメニューを眺めた。
んー…どれにすっかなー。
いくらカフェでこうやって時間を潰すとはいえ、今は緊張しているのだ。
だから正直言うと、あまり……腹も減っていない。
そう思いながら、「コーヒーだけでいいか」と考えていたら、その時ふいにいつのまにか後ろに並んでいた他の客に話しかけられた。
「…」
「すみません、前」
「…」
「ねぇ、ちょっと。前、進んでくれる?」
「…え?」
なんとなく、メニューにしか集中していなかったから気づかなかったけど。
俺のすぐ後ろに並んでいた女にそうやっていきなり話しかけられて、何も知らない俺は「?」でその女の方を向く。
……けど。向いた瞬間、
「……え…」
「…あ?」
「っ…もしかして、三島くんっ!?」