初恋フォルティッシモ
そいつはそう言うと、俺をその場に残してすぐさま音楽室に入った。
「?」
そしてそれと同時に、ピタリと止まってしまうトランペットの音。
閉められたドアの向こうからは、「どうしたの?麻妃ちゃん」という声が聞こえてくる。
…きっと。いや、間違いなくその声は今のトランペットの先輩の声だろう。
っつかあの女…アサヒっつうんだ。
俺がそう思いながら、やがて「食堂行くか」とその場を後にしようとしたら…
その時、それを引き留めるかのように中からまたその“アサヒ”という女が出てきた。
「おまたせ!」
「!」
「はいコレ!吹奏楽部の案内用紙!」
「!!」
そう言っていきなり渡されたのは、まさかのそれで。
別に吹奏楽部に興味があって来たわけでもないのに、俺はその勝手な勘違いにイラッとくる。
…別に入る気なんかねぇよ。
俺はそう思いつつ、その女に言った。
「…いや、そんなのいらねぇし」