初恋フォルティッシモ
そう言って、またその場を離れようとする。
だけどすぐに、それを引き留められた。
「え、何で!?だってすんごい興味深そうに見てたじゃ、」
「トランペットを見てただけだっつーの」
「…」
…部活に入るなんてごめんだからな。
そう思いながらそう言って、俺は再び音楽室の前を離れて階段を下りようとする。
しかし…
「っ、じゃあ、今日の放課後、視聴覚室で演奏会やるから来てよ!」
「?」
ふいに少し離れた場所でそう言われ、俺がその声に振り向くとその女が言葉を続けた。
「ミニ演奏会!あたしも出るし…あ、もちろんトランペットも出るよ!大活躍!カッコイイよ!」
「…、」
そしてそいつはそう言うと、ふいにその場に立ち止まる俺を追いかけて…その演奏会の案内用紙を俺に半ば強引に手渡す。
さっきの…仮入部の案内と一緒に。
けど……トランペット、か…。
俺はその言葉を聞くと、今度は黙ってその紙を受け取った。
…これが、先輩との出会い。
麻妃先輩と俺の、最初の出会いだった……。