初恋フォルティッシモ

そう言って、またその場を離れようとする。

だけどすぐに、それを引き留められた。



「え、何で!?だってすんごい興味深そうに見てたじゃ、」

「トランペットを見てただけだっつーの」

「…」



…部活に入るなんてごめんだからな。

そう思いながらそう言って、俺は再び音楽室の前を離れて階段を下りようとする。


しかし…



「っ、じゃあ、今日の放課後、視聴覚室で演奏会やるから来てよ!」

「?」



ふいに少し離れた場所でそう言われ、俺がその声に振り向くとその女が言葉を続けた。



「ミニ演奏会!あたしも出るし…あ、もちろんトランペットも出るよ!大活躍!カッコイイよ!」

「…、」



そしてそいつはそう言うと、ふいにその場に立ち止まる俺を追いかけて…その演奏会の案内用紙を俺に半ば強引に手渡す。

さっきの…仮入部の案内と一緒に。


けど……トランペット、か…。


俺はその言葉を聞くと、今度は黙ってその紙を受け取った。





…これが、先輩との出会い。


麻妃先輩と俺の、最初の出会いだった……。

< 17 / 278 >

この作品をシェア

pagetop