初恋フォルティッシモ
……………
一息吐いてインターホンを鳴らすと、ユリナは直ぐに顔をだした。
「おかえり、勇佑」
「…」
あれから電車に揺られること数十分、ユリナのマンションに着くのは意外とすぐだった。
ずっと、この後に来る瞬間のことで頭がいっぱいだったからか。
さっきは電話で怒っていたユリナだったけれど、今じゃもうすっかりお馴染みの笑顔を浮かべている。
多分顔が強ばっているだろう俺が靴を脱がないまま言葉を選んでいると、その間にユリナが言った。
「勇佑夕飯まだなんでしょ?何か食べる?あ、プリンあるよ!最後の一個だけど、勇佑にあげる!」
「あ、いや…」
「…何してんの?せっかく来たんだから上がってよ。早く~」
ユリナはそう言うと、俺の腕に手を伸ばして体を密着させる。
…麻妃先輩と瓜二つの顔だから、何だか言いづらい。
けど…
「…ユリナ」
「?」
俺は心に決めると、ユリナを自身から離して言った。
「今日は俺、ユリナに話があって来た」
「…話?」
「そう。ちゃんと聞いて」