初恋フォルティッシモ
…………
…そして、その放課後。
終礼が終わると、俺は昼休みに貰った案内を手に、視聴覚室へと向かった。
仮入部とかには行く気はない。
ただ本当に、トランペットの活躍を見るためだけに。
…っつか……視聴覚室ってどこだよ。
そう思いながら、独りでその目的地を探していたら…
その時、ふいにどこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「えぇーっ!
今日華木先輩いないんですか!?」
「…?」
…あれ?この声…。
その声にふと反応して、声がした方を見遣ると…
そこには、昼休みに音楽室の前で会った、アサヒという女がいた。
首には、俺がほとんど見慣れない金色の楽器をかけて。
その声に俺がふと立ち止まると、アサヒと一緒にいる女子生徒が言う。
「いや、午前中は元気にしてたんだけど、昼から風邪で熱が上がっちゃってさ…。
保健の先生に、帰りなさいって言われて帰ったんだよ」
「そんなぁ…」
「でもほら、このあとの演奏会、曲中に華木のソロパートもあったでしょ?だから結構“帰らない”って粘ってたんだけど…。
……あれ、代わりに麻妃ちゃん…出来る?」