初恋フォルティッシモ
「…!!」
……二人の会話からして、たぶんアサヒと話している女子生徒は三年だろう。
俺は勝手に、少し離れた場所から二人の会話を盗み聞きしていた。
そして、そんな突然の先輩の言葉に、不安そうにうつ向くアサヒ。
……あ、それより、早く視聴覚室探そ。
俺がふいにそう思って、その場を離れようとしたら、
その時後ろからまたアサヒの声が聞こえてきた。
「っ…出来ます!今から練習しますっ!」
「!」
………え、
「そう?じゃあ…頑張ってね。ギリギリまで練習してていいから」
「はいっ」
「……」
同じ吹奏楽部の先輩がそう言って離れて行くと、アサヒは早速廊下の隅で数枚の紙を広げる。
…あれは、楽譜か?
まー、せいぜい頑張れよ。
俺はトランペットしか興味がないけど。
そして俺はそう思うと、アサヒから目を背けて再び視聴覚室を探した。
……今思えば、俺はこの時に初めて、“麻妃先輩”に惹かれたんだと思う…。