初恋フォルティッシモ
そう言われて、周りにからかわれるアサヒはその言葉を必死に否定する。
そんな勝手な言葉に、一方の俺も思わずため息を一つ。
……早く帰りてぇ。
そう思いながら、しばらく座ったままぼーっとしていたら、そのうち視聴覚室の入口から女の先生が現れた。
「お待たせー」
…音楽の、木谷先生。
年齢は、30代前半くらいの綺麗な女の先生だ。
先生は新入生の姿を見ると、少しだけ目を見開いて言った。
「…おー、いっぱい来てるー」
…今のこの視聴覚室には、新入生の席は30人くらいは座れるようになっている。
その席は、俺がここに座っているから完全に満席だ。
さっき、あのアサヒとさえ鉢合わせにならなかったら、今頃は満席じゃなかっただろうに。
俺がそう思いながら黙って見ていると…先生が指揮者の台に立って、先生の指示で皆が一斉に楽器を構えた。
最初は見た感じ、普通の音出し。
その最中も、俺の視線はもちろんトランペットに向けられていて。
…やっぱり、カッコイイな。
そう思いながら、見ていると…そのうちにやっと、演奏会が始まった。