初恋フォルティッシモ
演奏した曲は、ほとんど知っている曲ばかりだった。
定番のアニメの曲に、
テレビでよく耳にする曲、
あとは人気アイドルのメドレーなんかも演奏していた。
そんななか、アイドルメドレーではトランペットのソロがあって。
……ああ、あれって昼休みに練習していたメロディーだ。
と、こうやって聴くと、改めてわかった。
トランペットを吹く先輩が、いつかに観た映画の主人公に重なる。
ソロが終わった直後は自然と大きな拍手が湧いてきて、
俺もああいう風にかっこよく吹けたら…なんて、ついそう思ってしまった。
やっぱり、トランペットは良いな。
そう思っていたら…そのうちにやってきた、曲の終わり頃。
ふいに、前の方に座っていたアサヒが、スッと立ち上がって楽器を構えた。
……一瞬、なんだ?と思ったけれど…。
今から吹くのが、さっき突然決まったソロパートなんだ、とやっと気がついた。
「…、」
…真剣な表情の、アサヒ。
さっき、演奏会が始まる前に見た笑顔とは、そのギャップが違いすぎるくらい。
曲は明るめのものだからか、アサヒの楽器を持つ手の指が忙しく動く。
…ソロパートは、意外に長くて。
あれを、今さっきの短時間で練習…してたってことか…?
……しかし、
そう思っていたら…