初恋フォルティッシモ





演奏した曲は、ほとんど知っている曲ばかりだった。

定番のアニメの曲に、

テレビでよく耳にする曲、

あとは人気アイドルのメドレーなんかも演奏していた。


そんななか、アイドルメドレーではトランペットのソロがあって。

……ああ、あれって昼休みに練習していたメロディーだ。

と、こうやって聴くと、改めてわかった。


トランペットを吹く先輩が、いつかに観た映画の主人公に重なる。

ソロが終わった直後は自然と大きな拍手が湧いてきて、

俺もああいう風にかっこよく吹けたら…なんて、ついそう思ってしまった。


やっぱり、トランペットは良いな。


そう思っていたら…そのうちにやってきた、曲の終わり頃。

ふいに、前の方に座っていたアサヒが、スッと立ち上がって楽器を構えた。


……一瞬、なんだ?と思ったけれど…。

今から吹くのが、さっき突然決まったソロパートなんだ、とやっと気がついた。



「…、」



…真剣な表情の、アサヒ。

さっき、演奏会が始まる前に見た笑顔とは、そのギャップが違いすぎるくらい。

曲は明るめのものだからか、アサヒの楽器を持つ手の指が忙しく動く。


…ソロパートは、意外に長くて。

あれを、今さっきの短時間で練習…してたってことか…?



……しかし、


そう思っていたら…

< 23 / 278 >

この作品をシェア

pagetop