初恋フォルティッシモ
指揮者~恋と愛~
「あの、すみません」
「…?」
マンションに向かって歩いていたら、突然誰かに声をかけられた。
「はい?」
知らない声。
まさか誰かに声をかけられるなんて思ってもみなくて、少しびっくりしてしまう。
…誰?
振り返るとそこには、知らない女の人が立っていた…。
「えっと…何か?」
「あなた、藤本麻妃さんですよね?」
「!」
「…私の勇佑が、お世話になってます」
…突然、名前を言い当てられて更にびっくりする。
それに、今その人が言った「私の勇佑」って…?
しかも聞き覚えのない声なのに、顔だけはどこかで…
でもそれは、目の前の女の人が何故か凄く自分に似ているからか。
そんなことを考えていたら、女の人が話を続けた。
「あなたの存在は、勇佑から聞きました。吹奏楽の時の先輩だったって」
「えと…失礼ですけど、あなたは…?」
「私はユリナっていいます。勇佑の、彼女です」
「!!」
ユリナさんはあたしの問いかけにそう言うと、ニッコリと微笑んで見せる。
“彼女”
そのワードに、思わず反応してしまった。
……でも、確か。
「…三島くんは、彼女と別れたって言ってましたけど」
「はい。別れました。一度は」
「!」