初恋フォルティッシモ

…一度は…?

その言葉にあたしが首を傾げると、ユリナさんが言う。



「…あれ?勇佑から聞かなかったんですか?さっきまで一緒にいましたよね?」

「!」

「悪いですけど、見させてもらいました。勇佑とあなたの姿を。

勇佑ったら焦れったいんだから。麻妃さんが辛い思いをするだけだから、早く言っちゃえばいいのに」

「…?」



…ユリナさんは勝手に話を続けてそう言うけれど、一方のあたしはその言葉の意味がわからない。

何が言いたいの?

そのことに少し不安を覚えていたら、やがてユリナさんが言った。



「…お腹に、いるんです」

「え、」

「私と勇佑の、新しい命が」

「!!」



…その言葉に、頭の中が真っ白になる。

何か鉄のような硬いもので頭を殴られたような衝撃。

…返す言葉がでてこない。

しかもそのうちに、またユリナさんが話し出す。



「一度、勇佑と私は別れるって話になったんですけど、私のお腹にいる子の存在がわかって、今日の夕方に勇佑に報告しに行ったんです」

「…っ」

「勇佑はもちろんびっくりしてました。でも、責任はとるよと言ってくれたんです。嬉しかった。…だから、麻妃さん」

「…?」

「勇佑は私のものです。彼がいなきゃ私は生きていけません。もう諦めて下さい、勇佑のことを」
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