初恋フォルティッシモ
そして自身のお腹に手を当て、「この子のためにも」と言葉を付け加える。
……子ども…。
…そっか。
今日、三島くんとご飯を食べに行く前、会社の入口付近のベンチで一緒に座っていたのは、ユリナさんだったんだ…。
じゃああの時、二人とも深刻そうな顔をしていたのは…このことを話してたってこと?
あのあとあたしが三島くんに声をかけたら、三島くんは困ったような顔をしていたし…。
でも、だけど…。
「…けど、三島くんは、そんなこと一言も…」
「言い出せなかったんでしょうね。あなたのこと、好きみたいだったし」
「…」
あたしが半信半疑にそう言っても、ユリナさんは余裕の表情。
…だけど三島くんは、合宿の時のことを謝ってくれた。
あたしの感情を知った上で、中途半端にしたくないって。
…あ、でも、確かさっきの駅で…
“ほんとは今日、俺もういっこ先輩に言いたいことあって、誘ったんすよ”
“…なに…?”
“…俺、気になってたんすけど、”
“もしかして、麻妃先輩…”
……けど、彼女とのことを言うような話し方…だったかな。
どっちかというと、あたしのことを話そうとしてた気が……結局聞きそびれたけど。
あたしがそう考えていると、そのうちユリナさんが言った。
「やっぱり…あなたも勇佑のことが好きなんですね」
「?」
「私と勇佑は、付き合ってもうすぐ一年が経つんです。それにこの前、勇佑が指輪をプレゼントしてくれました」
「…!」
そう言って見せられたのは、ピンクのダイヤモンドがついている高そうな指輪。
…左手の薬指にはめている…。
そのことにもショックなのに、ユリナさんは次の瞬間鞄からスマホを取り出して、ある画像をあたしに見せてきた。
「…これ、見て下さい」
「…!!」
「かわいいでしょ?勇佑の寝顔」
「…っ」