初恋フォルティッシモ

そして自身のお腹に手を当て、「この子のためにも」と言葉を付け加える。


……子ども…。


…そっか。

今日、三島くんとご飯を食べに行く前、会社の入口付近のベンチで一緒に座っていたのは、ユリナさんだったんだ…。

じゃああの時、二人とも深刻そうな顔をしていたのは…このことを話してたってこと?

あのあとあたしが三島くんに声をかけたら、三島くんは困ったような顔をしていたし…。


でも、だけど…。



「…けど、三島くんは、そんなこと一言も…」

「言い出せなかったんでしょうね。あなたのこと、好きみたいだったし」

「…」



あたしが半信半疑にそう言っても、ユリナさんは余裕の表情。


…だけど三島くんは、合宿の時のことを謝ってくれた。

あたしの感情を知った上で、中途半端にしたくないって。


…あ、でも、確かさっきの駅で…



“ほんとは今日、俺もういっこ先輩に言いたいことあって、誘ったんすよ”

“…なに…?”

“…俺、気になってたんすけど、”

“もしかして、麻妃先輩…”



……けど、彼女とのことを言うような話し方…だったかな。

どっちかというと、あたしのことを話そうとしてた気が……結局聞きそびれたけど。

あたしがそう考えていると、そのうちユリナさんが言った。



「やっぱり…あなたも勇佑のことが好きなんですね」

「?」

「私と勇佑は、付き合ってもうすぐ一年が経つんです。それにこの前、勇佑が指輪をプレゼントしてくれました」

「…!」



そう言って見せられたのは、ピンクのダイヤモンドがついている高そうな指輪。

…左手の薬指にはめている…。

そのことにもショックなのに、ユリナさんは次の瞬間鞄からスマホを取り出して、ある画像をあたしに見せてきた。



「…これ、見て下さい」

「…!!」

「かわいいでしょ?勇佑の寝顔」

「…っ」
< 238 / 278 >

この作品をシェア

pagetop