初恋フォルティッシモ
「…わかりました」
「…」
「仕事以外では、もう二度と三島くんと二人きりで逢いません」
「約束ですよ。お願い、」
ユリナさんの言葉で、あたしは再度頷く。
三島くんを信じたいけれど、もしユリナさんの言葉が本当だったら…と思うと、約束しなきゃいけない。
誰かの幸せを壊すのは、もうごめんだから。
あたしがうつ向いていると、そのうちにユリナさんは満足そうに帰って行った。
…あたしは独り、三島くんから言われた言葉が頭から離れない。
“俺…麻妃先輩が思ってる以上に、先輩のこと本気ですから”
“中途半端にしたくない、っていうか”
…あの時に見せた、照れたような顔が嬉しくて。
幸せを奪ってしまったのに、勝手に舞い上がってた。
あたしと三島くんが再会なんてしなかったら、そもそもこんなことにはならなかったのに…。
三島くんはちゃんと彼女のユリナさんのことを大事にしていて、あたしの知らない愛も持ってた。
…バカみたい。
再会したら上手くできる、なんて…何でそう思ったんだろ。
何も出来なかった過去の自分は、何年経った今だって、自分は自分でしかないのに。
結局、変わってない。
あたしはしばらくすると、涙のなかで渡辺部長に電話をした。
…前は連絡なんて自分からじゃしなかったのに、三島くんと再会してからはどうしても…どうしても……。