初恋フォルティッシモ
…………
ちょっとだけ。
マジで、ちょっとだけ…。
それから、先生の話を聴いた俺は、そのまま仮入部をしに音楽室へと足を運ばせた。
するとそこにはさっきの木谷先生もいて、二、三年生がそれぞれに視聴覚室から楽器を運んでいる最中、簡単に吹奏楽部についての説明を受ける。
その後楽器の移動や片付けが全て終わったら部員全員が音楽室に揃って、“基礎練習”と呼ばれるものが始まった。
それは、決められたテンポに合わせて、決められた長さで楽器を吹く“ロングトーン”と呼ばれるものや、
あとは少しだけ別の基礎練習も…。
だけど、ただ見ているだけのその間もつまらなくて、俺は思わず何度か欠伸をしてしまう。
ああ、早くトランペットが吹きたい…。
そんなことを思いながら待っていたら、やがて基礎練習が終わって、
やっと俺達新入生がそれぞれの楽器の扱い方を教えてもらえる時間になった。
普段は教室ごとに楽器別で練習しているらしく、
今日の仮入部は16人くらい来ていて、2人ずつそれぞれの楽器を順番に教わっていくらしい。
「今日のこの仮入部でも、皆の楽器のでき具合をちゃんと見るからね」
木谷先生はそう言うと、「頑張って」と新入生に向かって微笑む。
…別に、他の楽器とか興味ないしな。
だけど俺はその後、仮入部に来ていた他のクラスの男子と一緒に回ることになった。