初恋フォルティッシモ
その言葉に俺がそう聞いたら、麻妃は「嘘なんか吐かないよ」と、俺に目を向けたままそう答える。
だったら作ってほしい。作ってもらわない理由なんてないくらい。
俺は即座に頷きかけた。
「じゃあ…!」
あ、でもちょっと待てよ。
言葉を詰まらせて、俺は考え直す。
だって明日のジムは…
「…やっぱ、弁当はいいかな」
「え、何で」
友達も、一緒に行くし…俺一人じゃないから。
毎回コンビニに寄ってからジムに行ってる俺が、いきなり弁当なんか持って行ったら冷やかしの的になりそう。
っつか、絶対なるな。
だから俺は、せっかくの弁当を断った。
「や…ほら、麻妃大変じゃん」
「え、大丈夫だよ。こう見えて料理はそれなりに出来るし。カラフルで栄養満点のお弁当、早起きして作ってあげる。みぃ君の為に」
「…」
麻妃はそう言うと、それはもう可愛らしい満面の笑みを浮かべて俺を見る。
その笑顔は何より大事だけれど、それはもっと困るな。
明日の友達の反応を想像したら恥ずかしすぎて、俺は思わず麻妃に言った。
「ね、ありがた迷惑って知ってる?」
「え、何それ」
「だから、ありがた迷、」
「いや知ってるよ。…みぃ君酷い」
しかし俺がそう言うと、麻妃は案の定シュン…とした顔をする。
いいよ、どうせあたしの作ったお弁当なんて…。
不味そうだから食べたくないって言いたいんでしょ。
そう言っていつまでも拗ねてしまうから、俺は躊躇いながらも麻妃を励ました。
「や、そんなんじゃないよ。俺だって麻妃が作った弁当食べたいし」
「じゃあ何なの。ほんとはいらないんでしよ?」
「欲しいよ!ただ明日は…友達も、一緒に行くからさ」
弁当なんか持ってくと、冷やかされんじゃん。
俺が渋々そう言うと、麻妃はうつ向いていた顔をパッと上げて、再び俺を見る。
俺のクダラナイ理由を知った彼女は、一瞬にして元気を取り戻した。
「あ、何そんなこと!?そんなの自慢しちゃえばいいんだよ!」
「ん…うん、まぁ…」
「わかった!じゃあ堂々と自慢できるお弁当、はりきって作ってあげるね!」
「…エ」
どうやら俺の言葉は、麻妃のやる気に更に火をつけてしまったみたいだ…。
【彼女の手作り弁当/おまけ①】
(あれ、三島お前も今日弁当か!)
(え?)
(俺も弁当なんだよ!なんだ皆今日弁当じゃん!)
(……し、心配して損した)