初恋フォルティッシモ
【おまけ②】



子供の頃から毎回ワクワクしてしまう日。

クリスマスイブ。

そんな日に、あたしは風邪を引いた。


「…39度、」


最近会社でやたらと風邪が流行っていたから、たぶんそのせいだと思う。

あたしは体温計に表示されてある自分の体温を知ると、ため息交じりにそれをそばに置いた。

…計らないほうが良かったのかもしれない。

余計に熱が上がってきた気がするから。

ちなみに、この状態だから今日は会社を休んだ。

けど、気がつけばもう夕方。朝も昼も何も食べていない。

さすがにお腹空いたな…そう思っていると、


「…!」


その時。
ふいに玄関の方から、鍵を開けるような音が聞こえてきて、あたしは耳を澄ました。

もしかして…みぃ君?

そう思って、部屋の入口に目を遣っていると…


「…ただいま」

「!」


やっぱり。

部屋には、あたしが予想していた通りのみぃ君が入って来た。

あたしとみぃ君は同棲はしていない。

だけどみぃ君は仕事から帰って来て、あたしの家に寄ってくれたらしい。

その前にスーパーにも寄っていたらしく、左手には何やら大きめの袋を下げている。


「おかえり」


あたしがそう言うと、みぃ君が言った。


「具合どう?熱下がって…は、なさそうだな」


そう言いながら、あたしのおでこに右手を触れるみぃ君の手が、冷たくて気持ちいい。


「何か食った?一応、おかゆ買ってきたよ。レトルトだけど。あ、薬は?」

「…飲んでない。今日は朝から何も食べてないから」

「え、ダメじゃんそれ。何か食えって」


あたしの返事にみぃ君はそう言うと、「とりあえずおかゆの用意するよ」と袋からそれを取り出す。

その他にはアイスやリンゴ等の果物も買ってきてくれて、あたしは申し訳なく思いながらも有り難くそれを受け取った。


「…ありがと」

「ううん。麻妃はゆっくり休んで」

「うん」

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