初恋フォルティッシモ
【おまけ③】



ある日の夜。

マンションに向かって一人で商店街を歩いていたら、ふいに聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。


「っ、あれ、三島くんじゃない…!?」

「…え、」


…俺?

その声に振り向くと、そこには女の人が一人で立っていて。

その人は知ってる人だから、俺もその人を見るなりビックリして言った。


「…あ!先輩!」

「だよね、三島くんだ!わー久しぶり!」


同窓会以来だね、と。

先輩が言う。

…ああ、あの麻妃も来ることを期待して行ったのに、結局来なくて悄気た同窓会ね。

けど、そんなことはもうどうでもいい。

ただ、今の俺は…


「ひ、久しぶりっすね」

「ほんとにねぇ」


わからない。思い出せない。何て言うんだっけ、この先輩の名前。

俺は頭で考えながらも、取り敢えずは先輩に笑顔を向ける。

その先輩とは、吹奏楽の時の先輩だ。

同じサックスを吹いていて、麻妃の1コ上の学年のー……ああ、何だっけな。やっぱり思い出せない。

もう喉まで出かかっているのに、と考えまくっていると、そんなことを知らない先輩が問いかけてくる。


「え、今何してたの?仕事から帰るとこ?」

「いや、今日は休みで。友達と飲みに行ってて、その帰りなんすよ」

「あ、そうなんだ」
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