初恋フォルティッシモ
今日は土曜日だ。だから明日も休みだし、本当は朝まで飲んでもいいんだけど、明日は麻妃と約束をしているから、早めに解散した。
俺は先輩の相づちを聞くと、先輩に問いかける。
…ほんと、「先輩」という便利なワードを作ってくれた人に感謝したい。
「…先輩は何してるんすか?こんなところで」
「え、あたし?実はあたしも友達と約束してて、けどさっきドタキャンくらっちゃったから、今から帰るとこなんだ」
「へぇ…」
酷いよね、と。
先輩が苦笑いを浮かべて言う。
だけどその間も、ずっと俺の心はモヤモヤモヤモヤしていて。
何だっけ、何だっけ……先輩の名前。
いくら考えても、答えは出てこない。
するとそんな時、ふいに先輩が言った。
「あ、そうだ三島くん!代わりに付き合ってよ!」
「え…ええ!?」
「ほら、ご飯。あたしドタキャンくらったからまだ食べてなくて、ペコペコなんだよー。気になってるお店あるんだけど独りじゃ何だから…行かない?」
「!」
ああ、何だ。そんなこと。
俺がちょっとビックリしている横で先輩はそう言うと、「すぐそこだから、」と変わらない笑顔を浮かべる。
…まぁ確かに久しぶりに会う先輩だから、正直行きたい気持ちもある。
けど、麻妃に悪いからなぁ。
俺はそう思うと、先輩に言った。