初恋フォルティッシモ

今日は土曜日だ。だから明日も休みだし、本当は朝まで飲んでもいいんだけど、明日は麻妃と約束をしているから、早めに解散した。

俺は先輩の相づちを聞くと、先輩に問いかける。

…ほんと、「先輩」という便利なワードを作ってくれた人に感謝したい。


「…先輩は何してるんすか?こんなところで」

「え、あたし?実はあたしも友達と約束してて、けどさっきドタキャンくらっちゃったから、今から帰るとこなんだ」

「へぇ…」


酷いよね、と。

先輩が苦笑いを浮かべて言う。

だけどその間も、ずっと俺の心はモヤモヤモヤモヤしていて。

何だっけ、何だっけ……先輩の名前。

いくら考えても、答えは出てこない。

するとそんな時、ふいに先輩が言った。


「あ、そうだ三島くん!代わりに付き合ってよ!」

「え…ええ!?」

「ほら、ご飯。あたしドタキャンくらったからまだ食べてなくて、ペコペコなんだよー。気になってるお店あるんだけど独りじゃ何だから…行かない?」

「!」


ああ、何だ。そんなこと。

俺がちょっとビックリしている横で先輩はそう言うと、「すぐそこだから、」と変わらない笑顔を浮かべる。

…まぁ確かに久しぶりに会う先輩だから、正直行きたい気持ちもある。

けど、麻妃に悪いからなぁ。

俺はそう思うと、先輩に言った。
< 277 / 278 >

この作品をシェア

pagetop