初恋フォルティッシモ
その男の名前は、青田誠也というらしい。
見た目からして真面目そうで、しかもほとんど笑わない。だけど悪いヤツではないらしい。
…なんて。それは俺が言えることじゃないか。
まず、回ってきたのは金管楽器。
よくわからなかったけど、青田の話によるとトランペットは金管楽器らしい。
一番最初に習ったのはユーフォニウムで。
両腕で抱える、大きめの楽器。
心のどこかで、「楽器を吹くくらいなら簡単だろ」。
そう思っていたけれど…。
「あー、違う違う。そうじゃなくて、」
「…??」
これが意外に、難しい。
………ユーフォニウムは、ないな。
全然吹けなかったし、その楽器が俺にあたる心配はない。
でも青田はよく出来ていたようで、かなり褒められていた。
なんかムカつく。
そして、次に回ってきたトロンボーンやホルンも、なかなか難しかった。
音はそれなりに出たけれど、さっき見ていた基礎練習のことを合わせて考えると、ゾッとしてしまう。
……こんな吹きにくいのを、あんなに吹かなきゃいけねぇんだ、
俺には無能すぎる………。
………しかし。