初恋フォルティッシモ

次に回ってきたトランペットで。

俺は、初めて褒められた。



「すげー!音しっかり出てるね」

「えっ」



そうやって俺に言ってきたのは、吹き方を俺に教えている三年男子。

昼休みにこっそり音楽室を覗いた時に見た、あの人だ。

さっきまで褒められることがなかった俺は、その思わぬ言葉についテンションが上がってしまった。



「マジっすか!」

「うん。初めてにしては綺麗に吹けてるし、俺も最初はここまで出来なかったよ」

「!」

「君、えっと…三島くん?だっけ。向いてるんじゃない?トランペット」

「!!」



その三年生は俺にそう言うと、ニッと笑う。



「っ…じゃあ、吹奏楽に入ったら、俺がトランペットに選ばれる確率って…!」


「そうだね~。結構高いんじゃないかなぁ。まぁ最終的に決めるのは木谷先生だけどね。

三島くんはなかなか良い線いってると思うよ」



そう言って、「新たな大物の発見だ」なんて言葉を付け加える。

そしてその言葉を、思わず真に受けてしまう俺。


これはもう…俺、

トランペットで決まりじゃね!?


なんて、その後は独りでそう決めつけて、他の楽器のことなんて頭になかった…。

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