初恋フォルティッシモ

俺が呟くようにそう言って視線をまた空に戻すと、アサヒが俺の隣に腰を下ろしながら言った。



「なんだって何。ってか、お前って失礼でしょ。一応あたし先輩なんだから」

「なんで。お前はお前じゃん」

「そうじゃなくて、」

「じゃあ“麻妃”」

「!」



俺はそう言うと、またそいつに目を遣ってみる。

すると、一方の麻妃は突然の俺の呼び捨てに少しだけ顔を赤くする。


…ほー。


だけどハッと我に返ると、言った。



「あっ…麻妃もダメ!藤本先輩って呼ぶの!」

「んー。っつかさ、何しに来たの。麻妃先輩」

「!」



そして俺がふいにそう聞くと、麻妃…先輩は思い出したようにして言う。



「……部活、来ないのかなぁって…思って」

「は?」

「楽器。サックスになったんでしょ?昨日サックスの教室に来なかったじゃん。なんで?」

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