初恋フォルティッシモ
麻妃先輩は俺にそう問いかけると、そのまま俺の方に視線を遣る。
……やっぱりその話かよ。
俺はそれをうざったく思いながらも、麻妃先輩に言った。
寝返りを打って、そいつに背中を向けて。
「……サックスじゃ意味ねぇんだよ」
「え、」
「俺、トランペット吹きたかったし。けど、吹かされるのがサックスなら吹奏楽もやる意味ないだろ」
だからもう吹奏楽も辞める。
俺はそう言うと、「はぁー」と盛大なため息を吐く。
まぁ…少しだけでもトランペットに触れて、楽しかったけどな。
しかし麻妃先輩は俺の言葉を聞くと、言った。
「………サックス、嫌い?」
「いや、嫌いとかの問題じゃなくて、」
「実は、三島くんをサックスに推薦したの……あたしなの」
「!!…は、」
俺はその思わぬ言葉を聞くと、思わずビックリしてそこから体を起こす。
目を見開いてそいつに目を遣ったら、麻妃……先輩は俺を見ずに言った。
「…だって、三島くんが新入生の中で一番向いてると思ったし。だから、あたしから先生にお願いした」
「お前っ…何勝手なこと…!」
俺の気も知らないで!
だけど…俺がそう言おうとしたら、その前にそいつが言う。
「…三島くん、本当は仮入部の時……サックス、“吹けないフリ”したでしょ」
「!!」