初恋フォルティッシモ
「!」
「お前の勝手な考えで、俺はトランペットを吹けなくなったんだぞ。
サックスなんて向いてたとしても、最初から吹く気なんかねぇんだよ。どーせ辞めるんだからほっとけよ」
俺はそう言うと、そいつの掴んでいた肩を冷たく突き放す。
鋭い目付きで睨んでやれば、昔から皆は俺を怖がっては離れていくんだ。
誰だってそう。顔を真っ青にして、「ごめんなさい!」って。
だけど…
コイツは、違った。
「……やだ」
「!!…は、」
肩を突き放した直後…そいつは俺に怯えることなく、はっきりとそう言った。
まさかのその言葉に俺がそいつを見遣れば、そいつは真剣な表情を俺に向けていて…。
真っ青な顔一つ、していない。
それどころか…言葉を続けて、言った。
「そんな簡単に辞めさせないから」
「!」
「せっかくのサックス新入部員だもん。あたしは、三島くんにサックスのこと“好き”って言って貰えるまで、諦めないよ」