初恋フォルティッシモ
そう言って、強気に俺を見つめる…。
そんな視線に、やがて逆に俺がそいつからふっと目を背けてしまう。
……あまりにも、真っ直ぐに見つめてくるから…。
するとそんな俺に、そいつがまた言葉を続けた。
「今日は来てよね」
「…」
「…返事は?」
「……来ねぇよ」
「あーっ、もうまたそんなこと言う!」
……俺の言葉に、隣でそう言って騒ぐそいつ。
うるせぇし。
しかも、
「迎えに行くから」
「…は?」
「三島くんが自分から音楽室に来るのが当たり前になるまで、放課後になったらすぐ迎えに行くよ。
あたし、三島くんを推薦した責任があるから。だから、逃げないで待っててね」
「!」
そいつは俺にそう言い切ると、話が全部終わったのか、またその場から立ち上がる。
「…俺帰るし」
だけど、俺が何度そう言おうがそいつには結局無駄な話で。
……その日から放課後は、麻妃先輩が本当に俺がいる教室に毎日顔を覗かせていたのを、俺は大人になった“今”でも覚えてる。
俺は車を運転しながらその時のことを思い返すと、自然と笑みがこぼれてきた。
…深い切なさと一緒に。
今度は、俺が麻妃先輩のことを迎えに行けたら………なんてな。