初恋フォルティッシモ
そして俺がそんなことを思っていると、黒板に立つ華木先輩が言った。
「…じゃあ三島くん。この記号はわかる?」
「…?」
華木先輩がそう言って指を差したのは、算数で習うような不等号の大きい版のような記号。
けどそれも、この俺が知るはずもなく…。
「………だ、大なり小なり?」
なんて言ったら、華木先輩は突如「三島くんウケるー!」とか言って笑いやがった。
…わるかったな知らなくて。
そんな華木先輩に俺が若干やる気をなくしていると、華木先輩が言う。
「これはね、クレッシェンド。だんだん強くって意味だよ」
「……」
「で、反対のこれはデクレッシェンド。…意味はなに?言ってみて」
「……だんだん弱く?」
「そうそう!大正解!」
華木先輩はそう言うと、記号とその名前の横に、意味までもを書いていく。
“あたしが書いたのをメモって”なんて言われたから紙を貰って俺はそれをメモるけど………記号が多過ぎて覚えられる気がしない。
すると、そんなことを思いながらメモをとっていたら…
「ねぇ、華木ー!ちょっと来てー!」
「!」
その時突然、サックスの教室にホルンの三年生がやって来て、華木先輩を呼んだ。
面白いものがあるからすぐに来て、と。
そんな突然の呼び出しに、華木先輩は少し戸惑いつつ考えた後…
「え。あー……あっ。麻妃ちゃん!」
「…はい?」
「あと、三島くんのことよろしく!」
「!」
そう言って、すぐにその場を後にした。