初恋フォルティッシモ
ガラ、と横に引くタイプのそれを開ければ、その瞬間に皆の視線が一気に俺に刺さる。
「…っ!」
地元の小さな居酒屋だから、個室とかもなく、今日はここを全て貸しきっているらしい。
俺が「こんばんは」と呟くと、奥の方にいる華木先輩が、俺を見て言った。
「!!…あーっ!三島(みしま)くんっ!」
「!」
そんな華木先輩の声に、俺を完全に思い出したらしい皆が、俺に目を遣りながらそれぞれに「懐かしい」とか「こっち座りな」と声をかける。
華木先輩とは、同じサクソフォン=サックスの女の先輩。
吹奏楽部当時は、この三年生の華木先輩がサックスのリーダーで、いろいろ教えて貰っていた。
華木先輩が手招きをするから、俺は先輩の言う通りに華木先輩の隣に向かう。
……そしてその途中、狭い通路を通りながらさりげなく麻妃先輩を探すけど…
……彼女はまだ、来ていないみたいだ。
「久し振りー!元気だった?」