初恋フォルティッシモ
「え!?華木先輩っ…!」
そして、そんな突然の指示に、一方の麻妃先輩はビックリして華木先輩を呼び止めるも……時、既に遅し。
もう完全に華木先輩の姿は見えない。
すると麻妃先輩はやがて観念したのか、楽器を持ったまま俺の方に歩み寄ってきて…言った。
「……あたし何すればいいの?」
「記号教えて。あと楽譜の読み方」
「ああ、そういうことね。
…って、三島くん。先輩に対してちゃんと敬語を使ってねっていつも言ってるでしょ」
麻妃先輩はそう言うと、俺に向かって口を尖らせる。
他の先輩に対してはそれなりに敬語ができてるのに、と。
きっと、「何であたしだけ敬語じゃないの?」とでも言いたいんだろう。
そりゃあだってお前……………あれ、何でだ?
俺がそう思いながら独り首を傾げていたら、麻妃先輩は楽器をいったん手から離し、俺のメモを覗き込んできた。
「…へぇー。意外と真面目にメモってるんだ?」
「いや、華木先輩のチェックが入るから」
「なるほどね。……ってかまたタメ口、」
麻妃先輩はまたしつこく俺にそう言うと、机のメモから俺に視線を移す。
その時に、たまたま至近距離でぶつかる…視線。
……顔近ぇ。
俺がそう思いながらも、その視線からなんとなく目を背けずにいたら、麻妃先輩が先にそれから逃げた。
「………あ、青田くんはちゃんと敬語なのに」