初恋フォルティッシモ
麻妃先輩はそう言うけど、一方の俺はもうこれ以上は我慢の限界で。
その言葉を完全に無視すると、座っていた椅子から立ち上がった。
「ちょっ…三島くん!」
「…」
「座ってよ!これから説明するから!」
「…」
「っ…わかった!今日中には覚えなくてもいいよ!三島くんのペースでゆっくり覚えていけばいいからっ…!」
そうやって無言で教室を出ようとする俺を、麻妃先輩がそう言って必死に引き留める。
…でも、立ち止まってやらない。
教室を出た時、隣の教室で練習中のクラリネットの先輩が「どうしたの?」って俺達に聞いてきたけど、麻妃先輩は「何でもないです!」と言いながら俺の腕を掴んできた。
「…離せよ」
「やだ。言ったでしょ?三島くんが、サックスのこと好きって言ってくれるまで諦めないって」
「…っ、」
「音楽って、楽しいよ。三島くんだって、今は大変だけどこれからきっと…!」
……しかし。
俺はその言葉を本気でうざったく感じると、次の瞬間…
振り向き様に勢いよく壁に手をついて、そいつの言葉を強引に遮った。
「!!」