初恋フォルティッシモ

…壁についている俺の手のすぐ横には、麻妃先輩のビックリ顔。

これが、俗に言う壁ドンってやつか?

麻妃先輩の普段は細すぎる目が、今は珍しく少し大きくなっている。

俺が目の前でそいつを睨んでやると、さすがの麻妃先輩もビックリしたのか、そんな俺から目を逸らした。



「…、」

「…そういうのうぜぇんだよ」

「…っ」

「元々音楽自体興味ねぇのに、そんなちっせぇ可能性だけでやってられっか。わかれよブス」

「!」



俺は低い声でそう言うと、ビビっているそいつが面白くて、思わず鼻で冷たく笑う。


…“今”思うと、この時の俺の言葉はかなり酷い言葉だったと思う。この頃の自分を自分で殴ってやりたいくらい。


だけど、とにかくもううんざりだった。

トランペットを任されていたら、もう少し違っていたのかもしれないけど…。



「……ビビってんじゃねぇか」

「!」



そしてその後、やがて俺がそう言って壁から手を離すと…



「まっ…待って!」
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