初恋フォルティッシモ

「!」



………は?


ふいに、そんな俺をまた引き留めるように、麻妃先輩がそう言った。

普通ならその声に、立ち止まりはしないんだろうけど……

まさかまた呼び止められるとは思ってもみなかった俺は、思わず歩く足をピタリと止めてしまう。


……まだ何か言う気かよ。


そう思いながら、でも振り向けずにいたら、そのうち麻妃先輩が言った。



「三島くんは、知らないだけだよ」

「…?」


「知らないから、そんな好き勝手言えるんだと思う。だって音楽に興味がないんだもん。

だったら、あたしと一緒に色んなこと知ろうよ。あたしももちろんまだ、音楽のこと、知らないこといっぱいあるし…。

っ…とにかく、トランペットじゃなくたって楽しいこととか面白いことも絶対あるんだよサックスにだって!

あたしはそれ全部…三島くんと見てみたい」


「!」



麻妃先輩はそう言うと、それを黙って聞いている俺の背中を不安そうに見つめる。

だけど一方、そう言われた俺は…その言葉に少しだけ戸惑って。


…俺と…見てみたい…?


って………それ、どういう意味だよ。

その言葉に首を傾げた時、同時に俺は感じたことのない“心”の存在を感じた。


……心臓が、何故か熱く騒ぎ出してる。

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