初恋フォルティッシモ
「?」
麻妃先輩はそう言うと、後ろで隠していた一冊のノートを俺に見せる。
「?…何すかコレ」
そして一方の俺は、そのノートを目にしながら…何故かドキドキしていて先輩の顔を見れない。
俺がそれを受け取らずにそう呟くと、麻妃先輩が言った。
「勉強用のノート。吹奏楽部の、教科書だと思ってよ」
「…教科書?」
「三島くん、昨日言ってたでしょ?記号覚えるのも、近くに教科書とかがなきゃ無理だって。
これね、あたしが一年の時に全部覚えようと思って教科書みたいにまとめたノートなんだ」
でも、もう全部覚えちゃっていらなくなったから、三島くんにあげるよ。
…なんて。麻妃先輩はそう言うと、「ん、」とそれを俺に差し出す。
これを俺に渡す為に…わざわざ?
俺がそれを「…ありがとうございます」と素直に受け取ると、麻妃先輩は「これ渡すのに校内中探し回ったんだからね、三島くんのこと」と苦笑いを浮かべる。
…ノートの表紙には、でかでかと“吹奏楽部”の文字。
そしてその下には、“サックス 藤本麻妃”の名前。
「…それがあったら、少しは違うと思うから」
麻妃先輩はそう言うと、「じゃあまた放課後ね」とすぐに屋上を後にしようとするけど…