初恋フォルティッシモ
「あ。はい、まぁ…それなりに」
華木先輩の隣に着いてそこに腰を下ろすと、華木先輩が俺にメニューを渡しながらそう聞いてきた。
華木先輩は、昔から明るい性格。だから、先輩の周りには常に人がたくさん集まっている。
俺が華木先輩の言葉にそう頷くと、それを見ていた当時クラリネット担当の先輩が俺に言った。
「えぇー。三島くん、何か丸くなったねー」
「え、」
「いや、太ったとかそういう意味じゃなくてね。相変わらずスレンダーよ。
けど昔はさ、部内で結構荒れてたじゃん、三島くんって」
「…ああー、」
あたしらとか、手がつけられなかったもん。
その先輩はそう言うと、自分の分のビールを一口、口に含む。
…確かに、俺は吹奏楽部に入った当初、その言葉通り“荒れていた”。
俺には、昔から両親がいない。
俺が生まれてからすぐに二人とも事故で他界して、だから寂しさや僻み故に中学まで荒れていたのだ。
…まぁ、高校になったらそれでも落ち着いていた方…だと思うけど。