初恋フォルティッシモ

「っ……先輩!」

「?」



俺はその背中を見ると、思わずそう言って麻妃先輩を呼びとめた。



「…なに?」



その俺の声に、また振り向く麻妃先輩。

でも、なんとなく慌てて呼びとめたけれど…考えてみれば、言う事は特に、頭の中にはなくて。

お礼は一応言ったし、呼びとめた理由を必死に考えようとするけれど…


…だけど。

俺を見つめる麻妃先輩が、その時何故か輝いて見えて…俺の中で、また変な感情が生まれた気がした。


…なんだ?コレ…何なんだよ…。


そう思いながら、



「……すいません。やっぱ、何でもないっす」

「ええー、何それ」



俺がそう言うと、麻妃先輩は「気になるし」って笑う。


あ…ダメだ。

その笑った顔、…すっげぇ…より一層輝いて見える…。


でも、その後は結局俺は何も言えずに…やがて麻妃先輩は「またね」と屋上を後にした。



「…え、誰?今の」
< 50 / 278 >

この作品をシェア

pagetop